運動不足が続くとどうなるの?

運動不足

健康的な生活を送るには、習慣的な運動はとても大切なもの。運動をしなければと思いながらも、習慣化するのは難しいのが現状です。また、運動そのものが苦手でできればやりたくないと思っている方もいるでしょう。しかし、運動不足は肥満や生活習慣病のリスクを高めるだけではなく精神的にも悪影響を与えてしまいます。
運動不足が私たちに与える悪影響には一体どんなものがあるのでしょうか。

どうして運動が必要なのか

運動をしたほうがいいというのはわかっていると思いますが、どうして運動は必要なのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。

肥満の原因になる

運動はカロリー消費に効果的であり、体脂肪燃焼のために欠かせません。脂肪をため込むことは身体の代謝を低下させ、血行障害を引き起こしてしまいます。年齢を重ねるごとに基礎代謝は低下していくため、10代、20代と同じ食事をしていると、食べたものが消化されず胃腸に負担をかけてしまいます。太らない体質だから大丈夫だからという方も、体質は年齢を重ねるごとに変わっていくことを心にとどめておきましょう。お腹だけ出ている中年太りを避けるためにも運動する習慣を身につけたいものです。

身体活動量と死亡リスク

運動を含めた身体活動量が多いほど、全死亡リスク、心疾患や脳血管疾患での死亡リスクを低下することが報告されています。
運動強度指数値(MET)に活動時間をかけた”METs×時間”を身体活動量として、活動量の多さをグループ分けした対象者の身体活動量と全死亡、がん、心疾患、脳血管疾患での死亡との関連性を調査した研究がありました。
身体活動量が最大のグループはガンによる死亡リスクが男性は0.8倍、女性は0.69倍に低下し、心疾患死亡リスクは男性で0.72倍低下することが報告されています。男女の脳血管疾患死亡リスクについて低下はみられていませんが、女性だと心疾患と脳血管疾患の死亡リスクに低下傾向がみられたとされました。

うつ病やその他の精神疾患リスクを高める

身体的な影響だけではなく、心の病気への影響も出てきます。運動不足は自律神経系の働きを抑えてしまい、身体のホルモンバランスを大きく乱し、気持ちが不安定に。精神疾患の療法に運動が取り入れられるなど、精神面にも大きなかかわりを持っています。運動は人とのコミュニケーションを行うツールとしても最適なものなので、心身の健康に不可欠といっていいでしょう。

筋力や身体機能の維持

体調を崩して寝込んだ後は、疲れやすくなり、普段のように動けなくなるなど、体力や筋力、持久力が落ちたと感じることがあると思います。人間は持っている機能を使わないとあっという間にその機能は低下していくのです。
歩くという動作は普段、何も意識しなくても行っている行為ですが、歩くときは大腿四頭筋、大腿二頭筋、下腿三頭筋など多くの脚の筋肉を使って、一歩一歩と歩きます。脚だけではなくお尻や腰、背中、腕の筋肉も使っており、全身の筋肉を使って歩くことができるのです。また転ばず前に進むにはバランス能力、長時間歩くためには心肺機能も必要になります。
もしも歩くことをしなくなったら、筋肉は減少し、バランス能力、心肺機能も低下してしまうのです。歩くことが困難になると日常生活に大きな悪影響を及ぼす恐れがあるため、維持をするためにも毎日歩くことが必要なのです。

ロコモティブシンドロームのリスク因子となる

運動不足がまねく筋肉やバランス能力、心肺機能の低下によって骨折や転倒をしやすくなり、介護リスクが高くなることをロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)といいます。
ロコモを放置すると、寝たきりの介護が必要な状態につながり、生活の質が低下してしまうため注意しなくてはなりません。

運動不足でも健康であれば問題ない?

若いから、健康だからといっても運動は必要です。若い時期の運動不足は、将来的な健康問題を引き起こす恐れがあります。
運動は骨と骨をつなぐ筋肉を大きくし、骨に対しても負荷をかけます。10代は一生分の骨量を蓄える時期で、骨量は20歳前後でピークを迎え、加齢とともに減少していくため、成人になってから取り戻すことは困難なのです。
運動は将来的な骨量低下や骨折予防への効果が期待できます。

食事を意識しているので運動しなくていい?

食べない・運動しないという低エネルギー型の生活習慣による瘦せた女性は、骨や筋肉の質が低下するだけではなく、様々な健康リスクを引き起こす可能性が高まります。年齢を重ねても健康を保つには適量な食事だけではなく、適切な運動も必要です。
日本人女性は痩せている人の割合が高く、若い女性の5人に1人がBMIは18.5%未満です。メタボリックシンドロームに伴う生活習慣病リスクについて叫ばれているため、痩せていれば大丈夫と思うかもしれません。しかし、BMIが低い人(18.5%未満)であっても糖尿病の発症リスクは高くなります。また、寝たきりの原因にもなるといわれています。女性の寝たきりの原因の多くが転倒と骨折によるもので、運動不足や痩せが原因です。筋力不足による転倒と骨量不足による骨折が関係しているといわれています。
スポーツ長の調査によると特に35~39歳の女性の体力が低下傾向にあります。さらに小中学生女子だと運動をする子としない子の二極化が進んでおり、中学生女子の30%は1週間の総運動時間が60分未満だそうです。

日本人の運動習慣

日本では成人の35.5%が運動不足といわれ、3人に1人以上が運動不足という状況です。
運動習慣のある人は男女ともに高齢者が多く、若い世代ほど運動習慣のある人が少ない傾向にあります。なお、運動習慣のある人とは週2回以上、1回30分以上の運動を1年以上継続している人です。
世界保健機関(WHO)の運動ガイドラインでは活発なウォーキングなどの中強度の運動を1日30分、週5回以上を推奨しています。週に2回以上の筋トレを含めたり、座りっぱなしを避けることも薦めています。

身体活動量の基準

身体活動量とは、生活習慣と運動による活動量のことです。年代的に理想的な身体活動量は以下の通りです。

65歳以上

強度を問わず、どのような運動でもいいので身体活動を毎日40分以上意識して行います。

18~64歳

3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分行います。具体的にいうと歩行30分+ストレッチ10分+掃除20分などの活動です。
メッツとは運動や身体活動の強度を表す単位のことで、安静時を1としてその何倍のエネルギーを消費するかで活動強度を示します。

18歳未満

楽しく体を動かすことを60分以上行うことが推奨されています。

運動不足度チェック

自分の生活習慣を振り返ってみて、運動不足か確認してみましょう。

  • 体を動かすのが面倒だ
  • 寝起きから動き出すまでに時間がかかる
  • 階段は使わずにエレベーターやエスカレーターを使うことが多い
  • 階段を使うとすぐに息切れしてしまう
  • 少しの距離も歩きたくない
  • 夕方や夜になると疲れを感じる
  • いつも疲れている
  • 休日は家でゴロゴロ過ごすことが多い
  • しばらく体重計に乗っていない
  • 運動する時間を確保できない

チェック数が0~2個

現状、運動不足ではないといえます。引き続き運動を継続しましょう。

チェック数が3~7個

運動不足といえます。このままだと免疫力の低下や生活習慣病のリスクを高めてしまいます。なるべくは階段を使うなどして、軽めの運動をしてみましょう。

チェック数が8~10個

深刻な運動不足です。急に運動を始めると心身にストレスをかけてしまう恐れがあるため、無理なくできるストレッチや散歩などを実践するといいでしょう。

運動不足解消のために運動習慣を身につけるには

運動不足を感じているけども、日常的に運動を取り入れることができないというのが現状です。多くの人が運動不足とわかっているけども、運動をするという段階までいけていないということになります。強い意志をもって1日の運動量の目標を設定し、毎日達成するというのは難しいでしょう。
そもそも運動とは体力の維持・向上を目的として自分から積極的に実施するものです。運動する時間がとれないという場合、厚生労働省の”健康づくりのための身体活動指針”で推進している「+10(プラステン):いつもより10分身体を動かそう」を意識して生活に取り入れるといいでしょう。
運動不足だからといっていきなり激しい運動をすると、筋肉痛やケガのリスクが高くなり、長続きしません。気持ちよく運動を続けるためにも、自分の状態にあった運動量を見極めることが大切です。生活習慣を振り返り、続けられそうな運動から始めてみましょう。
例えば、一駅前で降りて10分歩く、家事やデスクワークの合間に数分程度のストレッチや筋トレを取り入れるといったものが挙げられます。生活習慣の中で少しずつ運動を取り入れることで、より高い負荷の運動習慣にスムーズに映ることも可能です。また、ジムやスポーツクラブを利用して、定期的に体を動かすこともおすすめです。

どのくらい動けばいい?

人によって運動量は大きく違います。これから運動を始めようと思ったなら以下の方法を参考にしてみてください。

プラス1000歩多く歩こう

普段2000歩程度しか歩いていない人に対して、1日10000歩を目標に歩きましょうといっても、達成を続けるのは難しいでしょう。「+10(プラステン)」です。10分多くあることで約1000歩多く歩くことになります。無理をしないで自分にできることを考えてみましょう。

週2回、30分の運動

息が弾む運動を30分以上、週2回行うことも提唱されています。運動自体はなんでも構いません。楽しく継続できる運動をみつけて習慣化することをおすすめします。
運動は将来的な疾病予防だけではなく、気分転換やストレス解消にもつながるなど、幅広い効用が期待できます。